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- グロイン|エンゲージメントレポート 2025
本稿では、当ファンドの運用チームが2024年に行ったエンゲージメント活動についてご紹介します。
■ 当ファンドのエンゲージメント(対話)
当ファンドの運用チームは、環境や社会関連目標ならびに企業統治(ガバナンス)に改善の余地がある場合や、当ファンドの運用に関連しかつ重要だと考えられる課題について、投資先の公益企業などとのエンゲージメント(対話)を行っています。また、ピクテの(株主としての)影響力や投資先に対するインパクトを最大化するため、ピクテ・グループ内の他の部門や社外機関(気候変動イニシアチブ「Climate Action 100+(CA100+)」等)との協働エンゲージメントを行います。
当ファンドのエンゲージメントでは、明確かつ測定可能な目標を策定した後、目標達成に要する期間をあらかじめ設定します。目標達成期間が終了した時点では、エンゲージメントの成果が以下の4つのいずれかに該当するかを判断し、エンゲージメントを評価します。
1.エンゲージメントの成功(目標達成):目標がすべて達成された場合には、バリュエーション(投資価値評価)や他のスコア要素を考慮し、当該銘柄の評価を見直します。
2.エンゲージメントの継続(目標達成期間の延長):目標のすべてが達成されたわけではなくとも、目標に向けた対応の進捗度合いが納得のいくものである場合には、目標達成期間の延長が正当化されると考えます。
3.エスカレーション:目標のすべてが達成されなかった場合には、段階的な組入れの引き下げを定めた「エスカレーション・ポリシー」を実行します。
4.エンゲージメントの失敗:目標がいずれも達成されなかった場合には、当該銘柄の評価を見直します。
気候変動は、ピクテのエンゲージメント活動の基盤を形成する課題であり、ポートフォリオや資産価値に対し、短期、中期、長期にわたって重大なリスクを及ぼす可能性があると考えます。従って、「温暖化による平均気温の上昇幅を産業革命以前の水準から2℃未満に抑える」との目標を掲げるパリ協定を支持しています。当ファンドの運用チームは、2024年もパリ協定に沿った低炭素経済への移行計画を策定することを期待して、企業との体系的な対話を継続しました。
当ファンドの運用チームは、2024年中に、投資先の企業との間で、242件のミーティングおよび電話会議を行いましたが、そのうち32件が、ターゲット・エンゲージメント活動(投資先の企業との直接的なエンゲージメント)に関連するものでした。
本稿に掲載するのは、当ファンドの運用チームが2024年に行ったエンゲージメント活動の実例です。
■ 米国テキサス州の総合公益事業会社2社とのエンゲージメント(対話)
・エンゲージメント(対話)の開始:2024年7月
・エンゲージメント開始の経緯
2024年7月、大型ハリケーン「ベリル」がテキサス州ヒューストン周辺に上陸しました。周辺地域での被害や、それに対する同地域で事業を行う公益企業および同州の規制当局の対応姿勢は、テキサス州の規制環境における根本的な問題を浮き彫りにしました。同州は、米国内において経済が急発展している州のうちの一つです。ERCOT(テキサス州の主要地域の電力供給を管轄するシステム機関)によると、2031年までに州内のエネルギー需要は大幅に増加すると予想されています。しかし、同州の脆弱な規制環境によって、州内で事業を展開する公益企業の財務状況は厳しいものとなっています。企業は、必要な設備投資を行う能力が制限されており、それが収益の重荷となっているほか、悪天候によって発生した復興にかかるコスト負担が企業の財政状況をさらに悪化させています。
当運用チームは、テキサス州の規制当局であるPUCT(テキサス州公益事業委員会)の委員長と、数人のテキサス州議員とのエンゲージメントに踏み切りました。関係者に対して電力料金案の見直しを検討するよう促すことで、これらの問題を解決し、企業の財務安定性を向上させ、同州の発展に必要な設備投資を実現することを目標に掲げています。
・目標
テキサス州の規制フレームワークの改善によって、同州の公益企業にとってより良い事業環境を実現すること
・エンゲージメントの目標達成期限:2026年末
・進捗レポート
当運用チームは、PUCTの委員長へレターを送付することで、本エンゲージメントを開始しました。民間の公益事業者が、州内の経済発展と天候被害に対する耐性の向上を可能にする役割を担っていることを強調し、安定した公正な規制フレームワークに支えられた、財政的に強固な公益事業の必要性を訴えました。また、当運用チームは、今回のハリケーンによって影響を受けた公益事業会社2社の代表者とも、今後の行動方針などについて協議しました。当運用チームは、11月にPUCTの委員長との会議を行い、その後も引き続きレターの送付を通して主張を続け、エンゲージメントを継続しました。
2025年の対応方針としては、テキサス州の知事や議長、同州上院および議会の主要委員会のメンバーなどを含む関係者にもレターを送付する予定です。
・結論:エンゲージメントの継続
※写真はイメージ図です。
■ 米国イリノイ州の総合公益事業および電力会社とのエンゲージメント(対話)
・エンゲージメント(対話)の開始:2023年12月
・エンゲージメント開始の経緯
2023年第4四半期、米国イリノイ州で事業を展開する2社(総合公益事業会社、電力会社の傘下にある会社)が提出した電力料金案に対して、同州の規制当局は驚くべき結果を発表しました。
規制当局は、上記2社の送電網整備計画が気候変動対策や公平な雇用創出に要求される基準を満たしていないと判断して計画を却下し、上記2社に対して電力料金案を3ヵ月以内に再提出するよう要求しました。また、認可されたROE(株主資本利益率)と許容される自己資本比率は、他の州の類似の料金案での条件と比べて非常に低い水準に設定されました。
この決定は、イリノイ州の公共事業の規制環境と同州のクリーンエネルギーへの移行に向けた規制当局による取り組みに疑問を投げかける内容のものとなっています。再生可能エネルギー発電の拡大のためには、送電網インフラへの投資が必要です。当運用チームは、この決定が公益企業にとって厳しい結果となったことに加え、イリノイ州および同州内におけるクリーンエネルギーへの移行のためのさらなる投資に悪影響を及ぼす可能性があると考えます。
・目標
公益企業にとって極めて厳しい内容となった電力料金案の再検討および改善によって、イリノイ州の公共企業が同州の要件を満たすために必要な規制フレームワークをイリノイ州が提供すること
・エンゲージメントの目標達成期限:2024年末
・進捗レポート
当運用チームは、公益企業にとって厳しい結果となったことに加え、イリノイ州および同州内におけるクリーンエネルギーへの移行のためのさらなる投資に悪影響を及ぼす可能性があるこの決定を再考するよう、イリノイ州知事と同州の規制当局とのエンゲージメントを試みました。当運用チームでは、2023年12月にイリノイ州知事と同州の規制当局にレターを送付しました。また上記2社は、両社ともに電力料金案を再提出したことを確認しました。
2024年12月、イリノイ州規制当局は、上記2社によって再提出された電力料金案に関する最終決定を発表しました。結果として、当初決定された電力料金よりも大幅に改善された内容になり、両社は同州において改定された電力料金を用いて事業を行うことができるようになりました。
・結論:エンゲージメントの成功
※写真はイメージ図です。
■ まとめ
ピクテは、投資対象とする企業や政府関連機関に対する重要なESG課題の解決に向けたエンゲージメント(対話)の拡大を促進しています。
歴史的な歩みが示しているのは、変革を起こし、サステナビリティを促進するために、投資家が単独で或いは協働して、受託者責任を遵守しつつ行動するならば、極めて多くの進展が実現できるということです。
こうした変革の必要性はかつてないほど高まっています。気候変動、飢え、水不足、病気ならびにその他の深刻なリスクから私達が暮らす世界を守り、地球を持続可能な軌道に戻すための主要な目標を定めた国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を2030年までに達成するには4年余りしか残されていません。
ピクテは、弊社独自のエンゲージメント活動を今後も広げていく所存です。また、前向きな変革を起こすために、他の投資家との協働活動を強化することに特に注力していきたいと考えます。
新型コロナウイルス(Covid-19)の世界的流行(パンデミック)が健康や世界経済に及ぼす衝撃的な結果や、ロシアのウクライナ侵攻、中東情勢悪化などによる資源供給懸念の高まりは、世界中に強い危機感を与えています。こうした状況は、今後のエンゲージメント活動の優先課題に影響を及ぼすことは必至だと考えます。
当ファンドは、引き続き、持続可能な社会に貢献するために、公益企業へのエンゲージメントを通じて、「グリーン・シフト(脱炭素化)」を促してまいります。
2024年にエンゲージメント(対話)を行った主な企業リスト
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