世界はクリーン・エネルギー・シフトへ


世界が「脱炭素社会」へ急速に舵を切る中、風力/太陽光発電といった再生可能エネルギーや電気自動車などの「クリーン・エネルギー」業界はしっかりと利益が出る体質になりつつあり、中長期的な事業のサステナビリティ(持続可能性)が高まっている。





気候変動対策は人類の長期的課題


世界の平均気温は上昇しており、2019年は1℃を記録。1℃の気温上昇で生態系シ ステムの一部に深刻な影響をもたらし、2℃の気温上昇では 多くの生物種が高リスクにさらされ、3℃以上では広範に及 ぶ生物多様性の損失が起こると警告されており、こ れは人間が生存できる環境が減少することを意味している。


出所:NOAA(米国海洋大気 庁)、UNEP(国連環境計画)、IPCC(国連気候変動に関する政府間パネ ル)

世界の平均気温差

年次、単位:℃、期間:1880年~2019年、世界の平均気温偏差は20世紀における世界の平均気温からの乖離を示す
出所:NOAA(米国海洋大気庁)のデータを基にピクテ・ジャパン作成


「パリ協定」が世界の環境意識を変えた



温室効果ガスの排出量削減の法的義務が先進国のみに課せられていた「京都議定書 」 とは異なり、「パリ協定」は途上国を含 む世界197カ国に排出削減の努力を求める画期的な合意 となった。この「パリ協定」では「世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える 努力をする」ことが世界共通の長期目標として掲げられた。





SDGs(持続可能な開発目標)の誕生が気候変動対策を後押し

パリ協定が合意された2015年に開催された「国連持続可能な開発サミット」において150を超 える加盟国が採択したのが、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」という成果文書だ。この文 書で設定されたのが、17の目標と169のターゲットからなるSDGs(持続可能な開発目標)。この中に「目標13:気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる(気候変動に具体的な対策を)」があり、これが パリ協定だけでなく企業の気候変動対策も後押ししている。




加速する主要各国・地域の気候変動対策



EU(欧州連合)

2020年1月に 「欧州グリーン・ディール」によって今後10年間で1兆ユーロの投資を促す方針を発表した。



米国

バイデン次期大統領はパリ協定へ復帰し、4年間で2兆ドルのインフラ投資を公約として掲げている。




中国

2030年までに二酸化炭素排出量を減少に転じさせ、2060年までに 「カーボン・ニュートラル」を目指すと表明。



日本

2050年までに「カー ボン・ニュートラル」を目指すと発表、再生可能エネルギーを主力電源化する意向を示した。





温室効果ガスの排出量が多い産業は電力と運輸


世界の温室効果ガス排出量の推移を主要産業別で見ると、特に電力の排出量が大きく増加している。これは、温室効果ガス排出量の多い中国が経済発展とともに存在感を高めたことと整合的である。

その次に目立つのが運輸における排出量の増加であり、世界的な経 済成長に伴ってヒトやモノの移動が増えたこと、そしてガソリン/ディーゼル車の販売が伸びたことなどが要因だ。



世界の温室効果ガス排出量 主要産業別推移

年次、単位:億トン(二酸化炭素換算)、期間:1990年~2016年
出所:CAIT Climate Data Explorer via. Climate Watch、Our World in Dataのデータを基にピクテ・ジャパン作成


2040年にかけて風力発電と太陽光発電が急成長する見通し



IEA(国際エネルギー機関)によれば、2019年から2040年にかけて石炭発電は7,897TWh減少、天然ガス発電も1,767TWh 減少する一方、風力発電は7,257TWh増加し、太陽光発電も8,135TWh増加する見通しだ。これは、世界的な二酸化炭素排出量削減の取り組みに加え、発電コストの低下や発電効率の向上によって、コスト競争力を得ていることが背景にある。





ガソリン車から電気自動車への大転換が進む

IEAの予測では、世界の電気自動車台数(プラグイン・ハイブリッド車含む)は 2019年時点の約760万台(乗用車+商用車)から、2030 年時点には約2億4500万台まで拡大する見込みだ。各国政府はガソリン/ディーゼル車の販売規制を導入する 予定であるほか、各国政府による補助金/税制優遇政策や 電気自動車における技術革新、販売価格の低下等が市場 拡大に寄与すると考えられる。




期待される投資マネーの「クリーン・エネルギー」業界への流入

金融業界でも環境等を重視した投資マネーが増加しつつある。ESG(環境・社会・企業統治)を考慮した各国地域別の投資 残高は右肩上りで伸びている。





EU(欧州連合)

12.0兆ドルから14.1兆ドルまで増加(年率8%成長)




米国

8.7兆ドルから12.0兆ドルまで増加(年率17%成長)




日本

0.5兆ドルから2.2兆ドル(年率114%成長)まで急拡大



※2016年から2018年にかけて
出所:GSIA(グローバル・サステナブル投資連合)



クリーン・エネルギー・シフトについて更に詳しく知りたい方はこちら




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